バランスの上に

四手井綱英さんの『もりやはやし』(ちくま学芸文庫、親本は1974年)です。
1972年に書いた連載をもとにしてできた本だということです。
1970年代ならば、まだ自然環境は、ふるいものとあたらしいものとが、せめぎあっていたともいえるでしょうか。けれども、すでに公害問題はおこり、いまでいう環境破壊も起きています。マツタケがとれなくなったのは、燃料の変化で、アカマツの林に対する人間の対応が変わり、富栄養化したからではないかと、著者はいいます。人間がはいることでつくられてきた景観が、生態系が、変わろうとしつつある状態への、著者の懸念も語られます。
たしか松井孝典さんが、ヒトは農耕・牧畜をすることで、それまでの、地球上の生物のひとつという段階から、地球そのものを変える力を持つようになったというたぐいの意見をいっていますが、そうした、ヒトが地球をどうするのかというところまで、つきつめて考えなければいけないのかもしれません。単に過去にもどればいいということではないでしょう。