それだけではないのだが
『心をつなぐ左翼の言葉』(かもがわ出版)です。
辻井喬さんに浅尾大輔さんがロングインタビューをしたもので、いちおう、奥付の著者名は、辻井・浅尾のおふたりが同列で書かれています。
意見の相違があっても、大きな目標のために連帯するということは大事だと思いますが、たとえばこの前の竹内栄美子さんと、どのように共同できるかという、具体的なところになると、もっと考えなければならないようにも思います。なにせ、宮本岳志さんが、参議院議員時代、2期目をめざす選挙のとき、当時問題を起こして衆議院議員を辞職していた辻元清美さんを、〔〈護憲共同候補〉にするからお前は降りろ〕という意見があったのだと、宮本さんのサイトでみたおぼえがあります。吉田万三さんの都知事選のときも、〔浅野史郎さんを出すから共同しろ〕という動きがあったように、どうしても一方的になりがちですから。
浅尾さんは、本のなかで、最近東大出の作家がいなくなったことが問題だといっています。日本を動かすような存在が、文学の道を選ばないところに、危機感を感じているのでしょうね(浅尾さんは名古屋大学でしたね)。
たしかに、まえに『民主文学』に連載されていた燈山文久さん(彼は早稲田です)の「青の旅人」にも、主人公が文庫本の棚をみて、日本の近代文学は東大出によって担われてきたと感じる場面がありました。
実際は、坪内逍遥・森鴎外・夏目漱石・谷崎潤一郎・芥川龍之介・中野重治・堀辰雄・中村真一郎・福永武彦・加藤周一・霜多正次・右遠俊郎・加賀乙彦・黒井千次・大江健三郎というように、あげることはできますし、最近は松浦寿輝が東大ですね。学校歴がすべてではないですが、文学への関心をどのようにもつかという点で考えれば、浅尾さんの提起は、けっこうおもしろいところをついているということでしょう。(え、私は東大を落ちましたし)