調査の結果

成澤栄寿さんの『島崎藤村『破戒』を歩く』の下巻、『「藤村」を歩く』(部落問題研究所)がでました。
上巻のときにも紹介しました(2008年8月30日です)が、徹底した調査は相変わらずで、パリにも行って現地取材をしています。藤村の生涯が、よくわかるものになっています。
さて、成澤さんは、各地の図書館での藤村の本の所蔵状況も調べています。すると、多くの図書館で、藤村全集は、閉架扱いになっていたり、一部欠本になっていたりするのだそうです。考えてみれば、藤村の全集自体も、ほとんどみかけませんし、ここ30年ばかり再刊されたという話も聞きません。そこに、1960年代後半から70年代前半に激しかった〈糾弾〉の影響を、成澤さんはみています。当時、〈糾弾〉に反対する人たちを、差別者だといって、中野重治野間宏は批判しましたが、こうした図書館の状況に、彼らはどうこたえるのでしょうか。