忘れてはいけない

李浩哲(イ・ホチョル)さんの『板門店』(姜尚求訳、作品社)です。
1950年代から2000年あたりまでの、作者の短編を集めたものです。
作者は、現在は北朝鮮のエリアにある、元山に育ち、朝鮮戦争のときに、従軍してその結果、韓国に住むようになった作家です。元山の中学では後藤明生さんと同期だったと、この本の解説で川村湊さんが書いています。

いまの韓流ブームとなった作品などではあまり感じないのですが、この作品集に収められたものをよむと、やはり韓国は分断国家なのだと思わずにはいられません。表題作は、韓国の青年が板門店に行って、北の女性記者と、心のふれあいができかけるという話ですし、最近の作品には、朝鮮戦争当時のことが書かれ、戦争と切り離せなかった時代がみえます。

この前、金大中さんがなくなり、今回、李厚洛さんの死が報じられました。1973年の段階では、『拉致』をしたのは、韓国の情報部員だったということもあったわけで、そこを越えた現在のありかたも、考える必要はありそうです。