衝突

『パプア・ニューギニア小説集』(塚本晃久訳、三重大学出版会、2008年、原著は1976年)です。
1970年代前半に書かれた(英語で)作品を3作(それぞれ作者はちがいます)集めたものです。原著の〈著者紹介〉によれば、作者は1950年前後に生まれた当時の若手作家ということのようです。
ニューギニア島には、20世紀になっても、〈原始的〉な生活(石器を使っているとか)をしている人びとがいるので、そうした人たちが、現代社会と接触したときにおきる、さまざまな事件が描かれます。〈白人のところにつとめた若者がいるから、村に死者が多く出た。これはたたりだから、その若者を呼び戻せ〉といわれた老父が、息子を説得しきれずに村にもどってきて、その結果村人たちによって、その一家が全滅させられるという話もあります。
村の掟では、結婚前の男女が関係をもってはいけないのに、それを破ったがために村八分にさせる若者の話もあります。
〈原始的〉とはいっても、豚は飼いますし、タバコも村には入っています。そうした、ふるいものと、20世紀にはいってきた新しいものとを、どう調和させて、新しい国づくりをしていくかが、作者たちの課題でもあるのでしょう。この地域は、第二次世界大戦の時には、日本とオーストラリアとの戦闘の舞台になったところでもあります。こういう世界もあるのですね。

原著は、Longman Paul Limitedというところから刊行されたようなのですが、翻訳したわが国のほうでは、この出版社と連絡がとれなかったようです。出版社の住所を調査中と、著作権表記のところに書いてあります。30年以上もたっていると、そうしたことも不明確になってしまうのかもしれません。