リスクを受容する

大熊孝さんの『洪水と治水の河川史』(増補版、平凡社ライブラリー、2007年、親本は1988年)です。
水害を防ぐといっても、限界がある以上、ある程度の〈洪水〉は受け入れるような社会を作っていくべきではないかという問題提起を、江戸時代の治水の理論(『百姓伝記』(岩波文庫で読めます)など)を参考にしながら、主張しています。
最近のゲリラ豪雨など、たしかに予測できないような事態もおきているとき、こうした過去に学びながら、新しい考えかたを導入するというのは、おもしろいことでしょう。文化というのは、そうした、経験の集合でもあるのですから。
もちろん、江戸時代には、列島の人口は3000万という上限があった(自給自足だとそうなるようです)わけですから、単純に江戸時代を理想化はできませんが、当時の状況から学ぶことは多々あるでしょう。
まちを歩いていても、微妙に段差などがあって、『ここは旧河道かもしれない』とか、『これは暗渠だな』とか感じることもときどきありますから、よく知っておかなければならないことは、あるでしょう。
こうした、理工系の本も、文庫や新書できっちりとひつような勉強ができるようでないと、世の中がみえなくなります。その点で、こうした本が、容易に入手できるのはありがたいことです。