痛み

出先ですので、簡略に。
アイザック・シンガーの『愛の迷路』(角川書店、田内初義訳、1974年、原本は1972年)です。
1940年代のおわり、ニューヨークに逃げてきたユダヤ人男性が、複数の女性と暮らしているときに、死んだと思っていた妻が目の前に現れる。というところから展開されるストーリーなのですが、そこには、ナチスによる攻撃から逃れ、スターリンの迫害から逃れ、という、当時のユダヤ人をめぐる状況が背後にあるわけです。最初の妻との間には、二人の子をもうけたのですが、子どもたちは迫害のなかで命を落としました。
この作品のなかには、パレスチナに新たにつくられたイスラエルに向かう老夫婦も登場しています。その点で作者を責めることはできないし、そこにある種の希望も、たしかにあったのでしょう。

アウシュヴィッツを経験したユダヤ人が、ガザで何をしたか〉という、厳しさを、他人事にはできません。〈ヒロシマナガサキを知っている日本人が・・・・・・〉と問いかけられるようなことにはしたくありません。