照る日曇る日

原田信男さんの『江戸の食生活』(岩波現代文庫、親本は2003年)です。
江戸時代が見直されることがよくあるのですが、安易なものには、江戸時代はこんなに豊かだったのだ、とか、エコだったとか、それですませているようなものも、けっこうあるのですが、この本では、もちろん上は将軍からはじまって、農村の状況や、蝦夷地や琉球の食べ物、さらには増補で伊豆諸島の話、飢饉のときのことなど、もりだくさんに、江戸時代をとらえています。
発掘であきらかになりつつある江戸雑司が谷鬼子母神前の食べ物屋の実態とか、淀川くだりの舟にちかづいて、食べ物を調理して売る舟の存在とか、(著者自身も、東南アジアの現状と重ね合わせています)のような、消費文化の発達を示すものと、飢饉のときに藁餅をつくったら、藁が腹中で発酵して死んでしまった話とか、琉球では救荒対策として毒抜きしなければ食べられないソテツを植えさせたとか、そうした厳しさをあらわすものもあって、巨大な格差の中での、明暗を感じさせます。
コメの消費の多くが日本酒醸造に用いられ、食用を圧迫していたというのも、ある意味、日本らしいのかもしれません。