刷り込みのこわさ

松木新さんの『アイヌを描いた文学』が刊行されました。札幌の文友社出版というところ(リンクなどは最後に載せます)から、ブックレットのようなサイズで出た小冊子です。
松木さんは、以前からアイヌ問題を描いた作品についての考察をしてきたのですが、この冊子は、文友社出版の出している小冊子に掲載されたものを収録したようです。日本人(和人)として、アイヌにしたことを、忘れてはならないことだと考える松木さんの姿勢は、大切なものだと思っています。
さて、ここでは明治のころから1960年あたりまでの、アイヌを扱った文学作品を紹介しているのですが、読んでいくと、多くの作品にアイヌは「滅び行く存在」であるという位置づけがされているというのです。日本政府が、アイヌが滅びるような政策をとりながら、「滅び行く」という感傷的な態度を刷り込ませていったということが、ここから見て取ることができます。いまさらそう信じ込まされていた過去はあるのですが、そこを克服していくことが必要なのでしょう。しかし、現実にはアイヌ語母語とする人はどんどん減っているようです。

松木さんは、時評など拝見すると、若い女性の作品を結構高く評価されているようで、この前も、綿矢りさの「夢を与える」を評価していました。そこは微妙に意見がちがうような気もします。

文友社出版 http://www.bunyusya.com/