ぜいたくな対話

加藤周一さんの『「日本文学史序説」補講』(かもがわ出版)です。
京都の市民の学習会、「白沙会」の人たちが、『日本文学史序説』をめぐって、加藤さんと勉強会を開いたときの記録をもとにしたもののようです。「白沙会」の人たちには、文学の専門家はいないということなので、それがかえって、個々の作品評価をこえた議論になっているような感じがあります。その中には、どう見ても加藤さんに聞くことではないような質問も混ざっているのはご愛嬌かもしれません。(朝鮮の朱子学受容に関してなど、答えられるとは思えませんから)その点では、質問者のレベルも問われてしまう、厳しさもあると思います。
加藤さんの本は、そこで取り上げられている作品が、容易に入手できて、だれでも(といっても、日本の大学の教養課程くらいの知識は必要かもしれません)読み直して加藤さんの評価に対して意見を言えるというところにあると思います。そういう点からも、この本はガイドとしての役目もあるとはいえるでしょう。