ただ見ているだけでなく

中野麻美さんの『労働ダンピング』(岩波新書)です。
現在の、非正規雇用の実態と、それが生み出されてきた背景を分析し、それに対しての発想の転換を呼びかけています。
新自由主義に基づく政策との決別以外に、再チャレンジを可能にする労働と社会のシステムを構築することは不可能だろう」と、中野さんは言い切ります。
中に引用された派遣労働者の意識でも、10年前には、『派遣』のかたちがいいという人のほうが、正社員になりたい人よりも多かった(それ自身がとても意外に感じたのですが)のに、世紀の変わり目あたりから、逆転して、正社員としての雇用希望する人が増えている統計が紹介されています。
いろいろな形で、今の労働と社会をめぐる本が出ているのですが、そうした調査や研究を、実際の生活のなかにどうやって生かしていくのかが、一人ひとりに問われているのでしょうね。その点では、のんびりかまえることは許されない、という覚悟が必要になるのでしょう。