だまされないために

またつながりですが、エドワード・サイード『ペンと剣』(中野真紀子訳、ちくま学芸文庫、2005年、ただし原著は1994年、親本は1998年)です。
パレスチナ問題に対してのサイードさんの意見に関しては、それが妥当なのかどうかはよく判断できないのですが、ともかく、印象に残ったのが、メディアが流す情報に対して、「記憶」と「懐疑」とを忘れないようにという、意見のところでした。メディアから流れる情報は垂れ流しになるので、以前どのような情報が流れていたのかを記憶し、またその内容にも、常に懐疑をもって対面していくことがたいせつだというのです。
オーウェルの「1984年」でも、過去にさかのぼって歴史を書き換える行為がありましたし、そうした形で情報を操作して、自分の都合のよいようにしていく為政者というのも、決してよそごとではないのでしょう。放送内容に介入して圧力をかけたというできごとが、すぐ目の前にもころがっているのですから。
先入観や、刷り込まれた記憶に頼らずに、じっくりと判断していくことが、たいせつなのですね。とはいっても、本屋の店頭にならぶ、他国を脅威としてしかみないような本のオンパレードを眼にするたびに、じっくりとした判断をするためのトレーニングも必要なのかと考えてしまいます。