新しい知見で

佐々木高明さんの『日本文化の多様性』(小学館、2009年)です。
日本列島に残る、水田稲作ではない農耕文化の流れをたどり、近隣地域との比較をしながら、いろいろな文化状況をさぐっています。
南西諸島では、水田耕作が、冬に田植えをして夏に収穫するという、本土とはちがう暦で動いていたり、各地の焼畑や畠(焼かないものです)作の実情をアジア各地と比較したりと、そうしたことが知られます。
なかでも、近年の発掘で、アイヌ文化は農耕を伴っていたことがはっきりとしたのだそうです。北海道島は、地域性から稲作は不可能ですから、アワやヒエが主要作物なのですが、17世紀の地層から、はっきりと畠の痕跡がうかがえるのだそうです。

ところが、転機となったのが17世紀だそうです。いくつかの火山が噴火し、土地が耕作不能になったり、和人との戦いに敗れ、交易が和人に有利なものになってしまったことが、アイヌ民族が和人に従属する流れをつくってしまったようなのです。そういえば、むかし『天下御免』という平賀源内を主人公にしたテレビドラマがありましたが、あそこでも、源内はアイヌの人たちに、農耕を教えようとする場面がありました。脚本を書いた方は、善意で源内を描いたのでしょうが、いまとなっては、こうした描き方はできませんね。