先祖

アルベルト・モラヴィア『アフリカ散歩』(千種堅訳、早川書房、1988年、原著は1987年)です。
1980年代のはじめごろ、著者がタンザニア・ザイール・ガボンジンバブエなどを訪れたときの記録です。アフリカの状況が、ヨーロッパ人である著者から見れば、いろいろとつっこみたくなるところもあるのでしょうし、アフリカの国々が、どのようにして世界のグローバリズムという収奪の仕組みの中で自立していくのかということは、簡単に答えの出ることではありません。
ジンバブエを訪れた著者は、国名の由来となった、グレート・ジンバブエ遺跡を訪れます。こうした遺跡は、著者の住むイタリアにも多くあります。そこで、かつて著者が、モスクワに行ったときに聞かれた次の問いかけとリンクします。〈古代ローマのいろいろな遺産をつくりあげた人びとと、現在のイタリア人はどうつながっているのか〉と。
この前、芥川が中国に行くときの里見とんのことばを紹介しましたが、過去のすぐれたものを、現在にどうつなげていくのか、その接続を考えるべきなのでしょう。もちろん、それは形のあるものには限りません。