手柄話

『新婦人しんぶん』に連載されていた、源河朝良さんの「秋の陽に輝く」が完結しました。昨年4月から、週刊紙なので、45回の連載となりました。毎回約3枚(400字詰め)弱ですので、全体としては130枚くらいでしょうか。
作品の舞台は、1980年代後半の沖縄県のある農業高校です。そこで、主人公の教師が、体育祭で生徒たちにフォークダンスを踊れるようにと指導する話です。普通科の高校では、生徒たちは、体育祭や文化祭で、けっこうのびのびと、男女が交流しながら行事にとりくむのに、この農業高校では、どうも生徒が自分から動こうとはしない。それを、フォークダンスをつうじて、ある意味での自己実現をはかれるようにしようというのが、主人公の動機であり、作者が書きたかったことでもあるのでしょう。
ただ、連載小説としては、物足りなく思ったのも事実です。トータルの枚数からすればしかたのないことですが、生徒の内面に主人公ははいりこめていません。ですから、観点が一面的になってしまって、主人公に共感できないならば、ストーリーに読者がはいれなくなります。
また、フォークダンスを成功させる話だけで、農業高校全体の活動への言及が少ないのも、何か肩透かしを食った気がします。それは、もっと長編になることを期待していたために、これで終わりかと、気が抜けたような感覚を持ったからかもしれません。それは読み手の一方的な〈期待〉だといわれればそれまでですが、読みきりの作品ではなく、連載となれば、それなりの予想をもって作品に対しますから、その点では、残念だといってもいいでしょう。
この教師を主人公にして、沖縄の現実をえがいた作品を、これからの作者に期待したいと思います。主人公は酉年うまれとありますから、1945年うまれで、復帰闘争の時代から、激動の沖縄現代史を生きてきた方となりますから。