継続のゆくえ

講談社学術文庫〈日本の歴史〉シリーズ17巻、吉田伸之さんの『成熟する江戸』(2009年、親本は2002年)です。
18世紀を中心にして、人びとの生産や消費の動向に焦点をおいて記述されています。さすがにこの時代ともなると、いろいろな点で現代とのつながりがみえてきます。三井越後屋の動向を記述したところでは、18世紀に入手した京都の土地で、1980年代まで三越の系列の店が営業していたのに、地上げでおおきな不動産屋の手に渡ってしまったなど、なまなましさも感じさせます。
また、青物流通や、魚の流通において、いまの生鮮市場につながる流れがあり、そのなかで、サツマイモは青物でも、土物でもなく、独自のルートがあったようだという指摘は、現在でも、東京の焼き芋の販売が、地方からの出稼ぎ労働者の手によって移動式の車上で行われていることを考えると、根が深いものだともおもわせます。
けれども、三越の土地が地上げにあったように、流通の状況も変わりつつあります。問屋・仲買を介した流通の状況が壊れつつあることは、いろいろな場面で見聞きするところです。そういう意味での転換期なのか、それにどう向かうのか、考えることは大きそうです。

4月1日付の『新婦人しんぶん』をみたら、サイズがタブロイド版に変わっていました。小説が掲載されにくいかたちの紙面なので、源河さんの小説が終わったのも、紙面の変化が一因なのかもしれません。そうだとすると、作者の腹案を展開しきれずに終わってしまった可能性も十分考えられます。