掘り起こし

中西宏次さんの『戦争のなかの京都』(岩波ジュニア新書、2009年)です。
京都のまちに戦争がどのように影を落としているのかを、さぐっています。建物疎開で商店街が消えたところや、空襲を受けたこと(当初目標ではなかったようなのですが、京都市内にも、爆撃をうけた場所があるということです)の調べなどが書かれています。
中西さんの家は、戦前は精練という、織った絹布を染める前の工程を生業にしていたのですが、戦時中に会社統合され、さらに商売道具のボイラーを供出されて、仕事が立ち行かなくなっていったのだそうです。そのボイラーは、中国海南島の鉄鉱石を処理するために、現地に送られたのだそうです。海南島の鉄鉱石を日本に送るために、いくつかの企業が開発を実質請け負ったのだそうですが、その会社が、石原産業と日本窒素(の系列会社)だというのですね。それぞれの会社が、戦後四日市水俣で何をやったのかはよく知られているでしょうが、そうした会社が外地からの引き揚げだったというのも、そうした新興会社の背負った経過というのも、日本の資本主義のゆがみのあらわれなのでしょう。