またひとり

もう、何人もの方が書かれているでしょうが、井上ひさしさんが亡くなられたということです。
組曲虐殺」が最後になってしまったのですね。
井上さんの作品を、それと意識して読んだのは、「偽原始人」でした。当時、『朝日新聞』の夕刊には、「偽原始人」が連載小説で、コラムとして加藤周一さんの「言葉と人間」があり、百目鬼恭三郎さんは無署名で「奇談の時代」を載せていて、今思えば、とてもぜいたくなラインアップだったと思います。
その後、リアルタイムで「戯作者銘々伝」を読んだ後は、しばらく遠ざかっていた(『吉里吉里人』は刊行後だいぶたってから読みました)のですが、最近は、『すばる』での、「座談会昭和文学史」や、いろいろな戯曲を、いろいろと考えながら読んだものです。
井上さんの作法として印象に残っているのは、作品を書くとき、登場人物の詳細な年譜や、作中の場所の地図をきちんと作ってから、創作にのぞむということでした。そういう細部をゆるがせにしない姿勢が土台にあって、フィクションが機能するということなのでしょう。

肺がんとのこと。ヘビースモーカーだったことは、みなさん周知のことだったでしょうから、それも、ひとつの要因だったのでしょうね。

一度だけ、黄表紙についての講演を、聴いたことがありました。