意外なところで

井上ひさしさんの追悼の気持ちもこめて、『映画をたずねて』(ちくま文庫、2006年、文庫編集オリジナル)です。
井上さんの対談集なのですが、黒澤明山田洋次渥美清という、そうそうたるメンバーとの語り合いが収録されています。井上さんが浅草フランス座で働いていた頃の渥美さんとのかかわりとか、黒澤作品やら、ゴジラの本多さんとのはなしとか、創る側の覚悟もきちんとみえる、いい本です。
その中で、作る側のもつ深みということで、『七人の侍』の参考に、ファジェーエフの『壊滅』(黒澤さんは、〈蔵原さんの訳したもの〉と言っています)があったという話も、明らかにされています。
ファジェーエフは、スターリン時代のソビエト文学の先頭に立っていた人で、スターリン批判に衝撃を受けて自殺した作家なのですが、作品は、内戦時代にパルチザン部隊が壊滅する話なのです。そうした、ソビエト文学の、良質なリアリズムを、黒澤さんも受け継いでいるというのも、発見でした。