誤算

朱建栄さんの『毛沢東朝鮮戦争』(岩波現代文庫、2004年、原本は1991年)です。
著者は中国の人ですから、中国政府の関係者から直接いろいろと取材をしたり、文書類なども読みこんで、中国が朝鮮戦争に参戦するまでのプロセスを、明かしています。中国にしてみれば、この戦争は、あくまでも朝鮮の内戦であって、直接的には関係のないはずのものだったわけです。ですから、著者の取材に対して、「かつて国民党と共産党との内戦で、どちらが先に発砲したのかを問題にしたことはない。たとえ中国共産党が先に国民党に対して発砲したとしても、人民を抑圧していた国民党側に正義があったということにはならない」というように、北朝鮮がさきに進撃したことよりも、問題点はべつのところにあるのだと、中国側は考えていたようです。
しかし、ご存知のとおり、内戦ではなく〈侵略〉とされて、国連軍という名目で出動するなかで、戦争のわくぐみが決まっていったわけです。その点では、この戦争はどこの国からみても、誤算の連続だったのかもしれません。そういうことからも、日本人として、この戦争の責任について考えなければなりません。