経歴

佐伯一麦さんの『からっぽを充たす』(日本経済新聞出版社、2009年)です。
仙台で出ている地方紙『河北新報』に連載した読書エッセイをまとめたものですが、毎回いろいろな本をとりあげて、それにまつわる話題を書いています。ですから、佐伯さんの幼い頃からの生活と、本とのかかわりが興味をひきます。
高校時代に埴谷雄高に影響を受けていたり、葉山嘉樹の文庫本(祖父江昭二さんが解説を書いているというから新日本文庫ですね)を読んだりとか、たぶん当時の進学校の生徒として、それらしい読書をしたことがうかがえます。
佐伯さんといえば、電気工としての生活を描いた作品で評判になったのですが(そのときにアスベストを吸い込んだことが喘息の持病につながったようですね)、そこにいたるまでの、基礎をつくった時代のことがわかって、蓄積の大切さを感じます。