季語

『俳句に詠まれた多喜二と党』(鶴岡書店、2009年)です。
正式には、日本共産党庄内文化後援会の発行ということらしいのですが、ISBNコードをつける関係で、地元鶴岡市の鶴岡書店発行ということのようです。
2008年9月に鶴岡市で行われた〈小林多喜二を語るつどい〉での、新俳句人連盟の工藤博司さんの講演を収録した小冊子です。
多喜二の短詩形とのかかわり(短歌はあるのですが、俳句はないそうです)や、伊藤ふじ子さんがのちに加藤楸邨門下で詠んだ句、さらには歳時記にもとりあげられている〈多喜二忌〉を季語として詠みこんだ句なども紹介しています。
新俳句人連盟は、戦後民主主義文学運動のなかの、俳句の分野で活動する人を結集していて、昔はプロレタリア俳句以来の、栗林一石路などが活躍した集団です。山形庄内地方というのは、民主文学の支部はない地域なのですが、俳句の分野では、工藤さんのような方が活躍しているようです。
新しいことばが、季語として歳時記にとりいれられるには、そのことばに思いをこめたひとが多かったということでしょう。それだけの力をもった作品が産みだされてこその季語になるのですから。そうやって、道をきりひらいた人のことを、考えなくてはいけないのでしょう。

多喜二といえば、国民新聞に投稿した作品がみつかったそうですね。徳富蘇峰の新聞ですから、あまり調査の手がはいらなかったのかもしれません。この前の百合子の新発見もそうですが、まだまだ、掘り起こされるべきものは多そうです。