リアルタイム

小林信彦さんの『黒澤明という時代』(文藝春秋、2009年)です。
小林さんは、「姿三四郎」を封切りで観たという、同時代の感覚を共有した方ですから、その面からの黒澤論となっています。小林さんの強みは、そうした同時代感覚にあるので、その点では、植木等渥美清について書いたものと近いといえるでしょう。
映画論のおもしろいところは、その気になれば、自分でも観直すことができることでしょう(もちろん、同時代感覚はありませんが)。演劇論が、どうしてもそのときで終わってしまう(かりに映像が残っていても、それは舞台そのものではありません)のに対して、映画は、自分の意見をもって、たたかわせることができるでしょう(実際にやるゆとりはないのですが)。花田清輝の『新編 映画的思考』(未来社)とかも、けっこうおもしろく読んだものです。
もうすぐ小林さんも80歳になります。ある意味、日本現代史の生き証人ともいえる方ですので、まだまだ書き続けていただきたいものです。