保存と管理

『明治社会主義史論』(青木文庫、1955年)です。
1907年から1908年にかけて書かれた、石川三四郎「日本社会主義史」山路愛山「現時の社会問題及び社会主義者安部磯雄社会主義小史」の3篇を収録したアンソロジーです。
当事者の回想という趣きのあう石川論文は、『平民新聞』紙上に掲載されたので、連載途中に当事者からの投書があり、それも文中に紹介されるという臨場感があります。
山路論文は、マルクスエンゲルスの思想がどう日本に受け止められたかの点で、愛山自身は科学的社会主義(このことばは文中に使われています。けっこう由緒のある言葉なのですね)の立場にはたってはいないのですが、そうした論客からも、注目されていたことがわかります。

それにしても、こうした本は、いまはなかなか流通しません。復刊しようにも、活版印刷なので、かりに出版社に紙型が残っていたとしても、それをつかって、活字を鋳造することもいまはできないでしょう。版面をスキャナにかけて、版を起こすのも、そう簡単にはできません。そういう点では、過去の文献を保存して、後世に伝えるのも、それ自体が一大事業なのだと思います。とくに、こうした、社会科学系のものがむずかしくなっているのではないでしょうか。