臍下丹田

ちくま学芸文庫の『ニーダム・コレクション』(牛山輝代編訳)です。
ニーダムといえば、中国科学史研究での業績はよく知られていますが、この本では、どちらかというと、一般の人向けに書かれたり、講演されたりしたものを集めているような印象があります。
そのなかに、「中世中国の霊薬中毒」(1959年)という文章があります。
中国では、人は命あるものを食しているから寿命は有限であるという意識があって、そのために不老不死を願う人は、命なきものを食するのだという方向にいくのです。それが、単なる五穀断ちというレベルなら、まだいいのですが、それが「丹」の摂取となると、とんでもない方向に向かうというのです。水銀や鉛、はては砒素やその化合物を摂取するのですから、逆に寿命を縮めることにもなります。この文章には、そうした文献上の実例が多くとられています。
これは、1970年代に発掘された馬王堆墓で実証されたわけですが、さすがに、ある時期になると、「丹」の毒性に注意が向けられるようになって、「丹」は修業のなかで、体内に自力で生成するものとされていくのですね。それが、房中術に流れていくのも、ある意味自然なのかもしれません。