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佐藤貴美子さんの『われら青春の時』(新日本出版社)です。
1950年代初め、名古屋市南部に民主診療所をつくった人たちの物語です。
佐藤さんは、こうした物語を書くのが得意で、今回も、当時の医学生や新米のお医者さん、受け入れる村のひとたちと、それぞれの人物が立ち上がってきます。
いまからわずか55年ほど前の話なのですが、それだけ、いまと社会のありようも、医療をめぐる問題も変ってきているようです。
まだ国民健康保険も機能していない時代、医者にかかること自体が大変なのですし、死亡診断書をかいてもらわなければならないので、形式的に医師に『診察』してもらう人もいます。子どもたちは寄生虫に栄養を吸い取られていますし、近くでは工場から出る有毒物質で井戸水が汚染されています。これは、行政区画では名古屋市に属している地域のことです。
現在と、いろいろと引き比べて考えるのも、いいでしょう。