ならう

藤田昌士さんの『学校教育と愛国心』(学習の友社、2008年)です。
近代日本の教育において、『愛国心』がどのように教えられていったのかを、教科書や副読本のたぐい、最近の『心のノート』にいたるまで、あとづけたものです。
先住民族としてのアイヌの欠落した〈愛国心〉と考えただけで、ことは明白なのだと思いますが、前に、藤木久志さんの『刀狩り』(岩波新書)についてふれたことがあったと思いますが、江戸時代を通じて、日本の民衆は、銃口を人間には向けなかったということは、考えていいことだと思います。戦国のいくさの世の痛苦の体験から、ともかくも、戦という手段を使わないで、200年以上を過ごしてきたことは、もっとかえりみられてよいのだと思います。
加藤周一さんの『羊の歌』に、横光利一が一高を訪れて講演をして、そのあとの学生との懇話会で、学ぶべき日本の伝統に、〈化政の江戸〉と答えて横光さんを激怒させた学生がいたことが、書かれていますが、その時代でも、学ぶ点は多いのではないでしょうか。
少なくとも、疲弊した農村の〈救済策〉として、〈満洲開拓〉をさせるような〈国〉を、愛するわけにはいきますまい。