世襲

大津透さんの、『道長と宮廷社会』(講談社学術文庫、日本の歴史シリーズ、親本は2001年)です。
道長一条天皇のつくりあげた、10世紀末から11世紀初頭の時代の政治状況なのですが、人を得ると、けっこう公卿の合議制は機能するものですし、(公卿の人数を20名以上にすると、会議が機能しなくなるので、人数は増やすべきではないという論議までされていたというのも、現代のことを考えると、鋭いものがあります)与えられた条件のなかで、工夫していたことはわかります。
けれども、それが、だんだんと、公卿を出す家、摂関になる家、学者の家、実務の家となると、その後の日本社会の流れもつくっていったのかもしれません。当時も、家柄はよくても、あまり能力のない人もいたようで、『蜻蛉日記』の作者の子どもの道綱さんは、そっちのほうだったようです。

政治家の世襲が取りざたされますが、小選挙区制をやめて、拘束式比例代表にすれば、ずいぶんと減るんじゃないでしょうか。『政治改革』をいい、小選挙区制を導入した細川さん以来、祖父の代までに政治家のいない総理は、村山さんだけでしょう。それが、当時の〈改革〉の本当のところだったのかもしれません。