めぐりあい

このところ、パレスチナ関係のものを多く読んでいるのですが、パレスチナの作家、ガッサーン・カナファーニー(1936−1972)の、『ハイファに戻って・太陽の男たち』(河出書房新社の新装版、元版は1978年)が印象に残ります。
作者は、パレスチナにうまれ、イスラエルができたときに、一家でシリアに逃れます。シリアとレバノンで、パレスチナ解放のために、作品を書きながら活動する中、自動車にしかけられた爆弾によって亡くなったのです。
表題作の『ハイファに戻って』では主人公夫婦が、1967年の6月戦争の後、20年ぶりにハイファに戻り、もとの自分の家を訪ねます。すると、そのとき置き去りにせざるを得なかった、当時の二人の間に生まれた乳児が、奇縁というべき形で、かれらの前に現われるのです。しかし、その子は、イスラエル国家に忠誠をつくす立場になっていたのです。

むかし、ベルリンの壁が崩壊したとき、〈ベルリンが東西ドイツの中間点にあって、国境線が貫いていると思っているひとがいる〉という、なかば笑い話があったものですが、よくよく考えてみると、6月戦争以前のエルサレムが、そういう状態におかれていたのですね。イスラエルは、戦争でヨルダン川西岸を占領し、エルサレム全域を首都と定め、パレスチナ自治政府の領域の中に壁をつくり、パレスチナ人の住んでいる地域を孤立化させようとしています。そういう事態の中で、この間の、イスラエルパレスチナとのいろいろな事件があるということを、知ったことはよかったと思います。すぐになにかできるというわけでもないのでしょうが、でも、知らないよりはいいことなのだと、思うしかありません。