頭かくして

大石又七さんの『これだけは伝えておきたい ビキニ事件の表と裏』(かもがわ出版)です。
第五福竜丸被爆した大石さんは、いまいろいろなところで被爆体験を語る活動をしています。この本の終わりに、そうした活動のリストがありますが、娘の通った学校も載っています。娘が言うには、中学のときに、校外学習で、葛西臨海公園第五福竜丸記念館にいったときに、大石さんの話を聞いたとか。
被爆して帰った乗組員たちを待っていたのは、事件を表に出さないようにしようという、日米政府の暗躍だったというのです。雀の涙の補償金でことをすませようとか、その『見返り』として日本の原子力開発をすすめようとか、そうした動きがあったことが最近判明してきたというのです。そういえば、雪の研究で有名な中谷宇吉郎さんも、このころにアメリカべったりに変貌したとかいう話をむかし聞いたことがあります。
国民の安全や健康よりも日米関係を重視する日本政府の癖は、いまも変わらないわけですが、それでも、年月が経過するといろいろなことがわかるものです。それだけに、持続的に問題を追及するとりくみが必要となるのでしょう。直接の体験者は、いずれこの世を去っていきます。それはどうしようもないことなのです。だからこそ、その人たちの気持ちを受け継いで、自分自身の課題として、問題を忘れないことが大切なのでしょう。