つくりごと

『神話と教育』(新日本新書、1969年)です。
当時の〈神話教育〉をすすめようとする動きに対抗して、直木孝次郎さんのような古代史学者や、本多公栄さんのような教育実践の立場からの意見などを集めたものです。日本の神話が、政治的な意図をもってつくられたこと、なおかつ、明治から戦前の教育では、教科書にのせるために、記紀の記述を変えて〈美化〉する方向で書き直してこどもたちに教えていたことが明らかにされています。
また、神話をどう教室であつかうのかに関しての、実践記録もあり、多面的に神話教育の問題をとらえようとしています。
考えてみれば、天皇の代数さえ、1920年代に決められたものですし、(北朝はともかく、南朝方にしても、後村上のあとは後亀山だとそれまではされていたわけです)さまざまな問題は、これからの教科書を考えるうえでも、大切なのでしょう。
植民地朝鮮の教科書では、スサノオが韓に行ったという日本書紀のなかの異伝をあえて取り上げ、日本の支配の正統性の教えこみに使ったのだそうです。そうなると、出雲の〈国引き〉の話も、どう利用されるかわかりませんね。