再現

田邊雅章さんの『原爆が消した廣島』(文藝春秋、2010年)です。
田邊さんは廣島の産業奨励館のすぐとなりにある家で生まれ育ち、国民学校2年生のときに疎開中に原爆が投下され、母と弟は家にいたのでたぶん即死、父親は陸軍の軍人で市内で被爆、15日に死去、田邊さん自身も、原爆投下直後に入市し残留放射能を被曝という経歴を持つ映像作家のかたです。原爆投下前の廣島の町を、映像で再現しようとした記録を本にまとめたものです。
いま、資料館から平和公園を北上して相生橋まで歩くと、ここにかつては繁華街があったことなどわからないように、公園化されています。それだけの面積が、すっかり焼き払われてしまったわけで、そこに原爆の威力もあったということにもなるのでしょう。
それまでの川は、市民の遊びや憩いの場であったのに、それ以後は誰も泳がなくなった、というのも、考えさせられます。