積極的な関心

山内昌之さんの『近代イスラームの挑戦』(中公文庫、2008年、親本は1996年)です。
中公文庫で、「世界の歴史」のシリーズが出だしたので買ってみたのですが、世界史といえば、受験のとき以来あまり本格的には勉強していなかったので、この本に出ているような、19世紀のエジプトやトルコ、イランやロシア帝国に服属した地域のことなどあまり知らなかったので、そうした地域の状況がよくわかります。
とともに、著者が多く紹介しているのが、この地域の状況を、同時代の日本人がどのようにとらえていたのかという視点なのです。江戸幕府がオランダから得ていた風説書の情報であるとか、実際に西洋を訪れるときの中継点であったエジプトを通過した際のさまざまな人の感想、エジプト独立の「志士」でセイロン島に流されていたウラービーに会った日本人の記録などが記されます。
前に、東海散士の「佳人之奇遇」について、ここで紹介したことがありましたが、彼もウラービーに面会し、その内容を「佳人之奇遇」に書き込んでいます。そうしたことも含めて、19世紀の日本人が、世界の情勢をつかみ、その中で日本国がどうあるべきかを模索していたことを、もっと知っておくべきなのでしょう。それは当然、日露戦争のあと、日本人がみずからを「一等国」になぞらえ、アジアを征服すべき対象としてみるようになっていく過程の、とらえ直しにもつながっていくのだと思います。