わかったようなわからないような

小林誠さんの『消えた反物質』(講談社ブルーバックス、1997年)と、益川敏英さんの『現代の物質観とアインシュタインの夢』(岩波科学ライブラリー、1995年)です。
もちろん、今回のノーベル賞受賞を機に重版がかかったもので、小林さんのほうは3刷、益川さんのほうは2刷でした。
こういう人間の普通の感覚をのりこえるような世界(当たり前のように受け止めてはいますが、波と粒子と二つの側面を同時に持つということ自体が、とっぴょうしもないことです)のことは、なかなかわかるようでも実際にはわかっていないということかもしれません。
昔の高校数学の「数学三(ローマ数字は文字化けするようです)」でつまずいてしまった人間ですから、書かれていることへの感想というよりも、そうした物質の奥底まで追求しようという、著者の姿勢にひかれるということであるのでしょう。
かんがえてみれば、「鉄」という元素が存在するから、地球もこの宇宙空間に存在することができて、そのために地球上に生命が誕生できたわけですし、そうしたことを解明しようという、人間の意欲が、今の世界をつくってきたことも大事なのだと思います。
そうした、本質を追求しようという人間の精神は、社会の本質をつかんでいこうとする気持ちと共通する面があるのだと思います。そういう点では、人間を信頼することも、自然の法則を研究することも、その根っこは同じなのかもしれません。