事実は事実

武田知弘さんの『ヒトラーの経済政策』(祥伝社新書)です。
NSDAP時代のドイツの、なるべく『光』の面を取り上げようというところにねらいがあるようです。たしかに、当時のドイツが、ある意味開発独裁的なところもあるので、そういう側面からのアプローチもあってよいとは思います。
けれども、融資が「ドイツ人」に限られたり、フォルクスワーゲン計画も、実際には戦争の開始で、労働者が払った掛け金が掛け捨て状態になってしまったとか、それ自身が実行できないこともあったわけですし、ユダヤ人絶滅とか、中部ヨーロッパへの侵略とか、そことのかかわりを、新書という枠の中ではあっても、もう少し追求してほしかったとは思います。
前にも書きましたが、韓国でもかつての独裁と呼ばれた朴正煕も、娘が大統領候補として選ばれそうになるように、評価されている面もあるみたいですから、そうした「独裁」のありようは、もっと考えなくてはいけないのでしょう。