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加藤陽子さんの『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』(朝日出版社)です。
加藤さんが、神奈川のある中高一貫校の、歴史研究のクラブの生徒に対して行った講義をまとめたものです。
加藤さんは、近代日本史を、政治家の動向を中心に押さえようとしています。その点では、民衆の動きについては、やや軽くみているようなところもあるのですが、明治以降の日本の動きを、外国とのかかわりからも見ようとします。
その点では、初心者向けではないのかもしれませんが、政治家や軍人の意識の問題を考えるには、参考になるということでしょう。
戦前の政党政治が機能不全に陥ったことを加藤さんは、国民(選挙権のある男性ということでしょう)が求めていた改革が、戦前の政治機構では実現できないため、擬似的な改革を軍部に期待したのではないかと述べています。治安維持法で改革を求める精力が弾圧される中でのよりましな改革をめざす方向も、ねじまげられていったということでしょう。そういう状況は、今の新政権の帰趨をきめるものとも、似通っているのかもしれません。