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橋爪紳也さんの『ゆく都市 くる都市』(毎日新聞社、2007年)です。
都市論をモダニズムの立場から考えるというのが、橋爪さんの発想にあるようで、この本でも、タワーであるとか、水辺の光景であるとか、そうした実用一点張りとはちがった観点から、都市の姿を考えようとしています。また、火事で焼けた法善寺横丁の再建にもかかわったそうで、その中で、建築基準法の特例的な解釈を引き出して、それを用いた再建の姿は、都市の人間関係をふまえたもので、おもしろく読めました。
そうであるだけに、彼がこの前の大阪市長選に出馬したときにはおどろいたものです。行政のトップになることで、自分の理想とする都市を実現しようとしたのでしょうか。政党の推薦は受けなかったようで、そうであるだけに、よけいわからなくなりました。学者と行政トップという、政治の分野とのつながりは、微妙なものだと思いますが、これからは、橋爪さんの本も、単純には読めなくなるのでしょうか。

一週間ほど前に、「7月4日に生まれて」の映画の話を書きましたが、あの主人公は、高校にやってきた海兵隊の募集に応じて、海兵隊にはいり、ベトナムで負傷したわけです。たしか、そのときに、募集に来た上官は、「愛国者としてのプライド」をくすぐるような言い方をして、若者たちを勧誘していました。
沖縄で続出する海兵隊員のできごとを聞くと、そうした「プライド」の実体もみえてくるようにも思えます。