改革のかなめ

『アジアの目覚め』(学藝書林、全集現代世界文学の発見8、1970年)です。
この叢書は、同じ学芸書林が出した、全集現代文学の発見(最近、新装版が出ています)の姉妹編であるようです。監修が野間宏長谷川四郎堀田善衛佐々木基一という顔ぶれです。
実は、古書店でこの巻を見るまで、この叢書の存在を知らなかったのですが、このメンバーなら、なるほどとうなずけるものです。他の巻の内容はわからないのですが、けっこう野心的な編集ではないでしょうか。とりあえず、この巻では、中国・ベトナム・朝鮮(植民地時代のものと、南北それぞれ1作ずつ)の作品で、いずれも初の日本語訳だと、この巻の編集にたずさわった桧山久雄が書いています。
蕭軍の作品、「八月の村」は、「満州事変」のころの抗日パルチザンの活動を描いた作品で、インテリあがりの指揮官が、恋愛に悩んでたたかいをおろそかにしようとしているところを批判的に描いている点がおもしろく読めます。
民共和国成立後の作品として、石果という人の「風波」、秦兆陽という人の「相思樹」という作品が収録されているのですが、いずれも、結婚をめぐる話で、新中国において、結婚の問題が重視されていたことがうかがわれます。趙樹理にも『結婚登記』(岩波新書で邦訳が出ていました)だの「小二黒の結婚」(これは学生のとき中国語の教材で少し読みました)という作品があって、やはり農村における結婚の問題をあつかっています。
新しい政権が民衆の支持を得るということは、何か「この一点」ともいうべきところがあるような気がします。中国の場合、抗日ということもありますが、旧地主の横暴に対して、土地改革と結婚問題というところが、カギになったのではないでしょうか。(前にもどこかで書いたような気がしますが)それが、〈人民公社〉のような、集団化に一足飛びに〈移行〉しようとしたところに、つまずきがあったのではないかとも思うのです。最近でも、憲法改正をめぐるベネズエラのニュースをききますが、そうした〈前進〉の歩幅をみきわめることが、政権を担ったあとの課題になるのでしょう。