使い方

村上隆さんの『金・銀・銅の日本史』(岩波新書)です。
前近代の日本における金銀銅の採掘や利用に関しての発掘や科学的所見をもとに、日本の技術のありようについて考えています。いろいろな技術的達成と、それを可能にする職人の技については、さまざまな意見も前からありますし、鉱石から金属を取り出すほうはともかく、金属を加工する技のすばらしさについては、今までも言われていることでしょう。
著者が、何年か前に、発掘された銅鐸が、最初はあざやかな銅の色をしていたのが、空気に触れることでみるみるうちに色が褪めてゆく(それだけ現代の大気中にはいろいろな汚染物質が多いということなのでしょうが)場面は、カラーの口絵もついていて、銅鐸が祭器として扱われていた時代のことを思わせます。
この銅鐸が長期間きれいな形で保存可能であった理由も分析しつつあるとのことですが、このことに動燃が注目しているというのです。原子力発電所からでる廃棄物を長期にわたって保存しなければならないので、そのための参考にしようということだそうです。技術も、使い方次第ということでしょうか。