外から見る

ブルーノ・タウト『忘れられた日本』(篠田英雄訳、中公文庫、親本は創元社から1952年に出た文集)です。
タウトはご存知の方も多いでしょうが、ナチス政権から逃れて日本に1933年にやってきて、1936年にトルコの大学に赴任するまで日本に滞在し、桂離宮などの建築を評価した人です。この文集でも、桂離宮白川郷を評価し、東照宮を評価しないという著者の立場がよくわかります。
外から日本を見ることで、当時の日本のもっていた(いまもあるでしょうが)「キッチュ」(「いかもの」と訳されています)性をするどく見ています。京都でも、桂離宮とほぼ同時代に二条城も石清水八幡宮も造られているわけで、東照宮とともに徳川家光好みとでもいえそうなものと比較したくなるのも人情でしょう。
日本の家が夏を想定して作られていることもすぐに見抜いています。『徒然草』のことをタウトが知っていたかどうかはわかりませんが、そうした観察も、なるほどと思わせます。
あと、外からの観察だからこそみえるのでしょうか、こういう記述があります。(72ページ)
「日本における五百六十万戸の農家には、全人口の八割が住んでいる。しかしこの八割は、一九三〇年の国勢調査の結果によると、日本の全収入の一割八分を占めるにすぎない。従って一戸当りの平均年収は僅かに三百十九円である」
岩波文庫の★ひとつが20銭の時代のことです。これが、『美しい国』を目指している人たちが理想としている時代なのです。