グローバル

昨日の続きを少し。
映画『クーレ・ヴァンペ』では、労働者のスポーツ祭典が終わった後、彼らが乗っている電車の中で、ブラジルではコーヒーが余っているので、焼き捨てているという新聞記事が、乗客の手によって読み上げられます。それをきっかけにして、「立襟の男」が、高い価格のコーヒーを買わされるのは、外交政策で手を縛られているからだという演説をするのです。民衆の不満をそうしたヴェルサイユ体制打破の方向に向けようとする勢力の存在が、そこに描かれているわけですが、〈コーヒーの焼き捨て〉といえば、前にここで書いた石川達三の「蒼氓」にも、移民が入植しようとするブラジルでは、コーヒーの値段が下落して、焼き捨てるしかない状況が描かれています。タウトが日本の貧困を指摘したこの前の文章も、1930年の国勢調査をもとにしていますし、石川達三の作品の舞台も1930年です。コーヒーと生産者・消費者をめぐるグローバルなつながりが、ここにあらわれているともいえるのでしょう。世界は、こうしてつながっていたのです。