目の前の展望

NHKの「その時歴史が動いた」は、瀬長亀次郎さんの話でした。『瀬長亀次郎回想録』(新日本出版社、1991年)は、昔読んだことがあったのですが、このほかにも、瀬長さんを題材にした霜多正次さんの小説「宣誓書」(1955年発表)などもあります。
戦後まもなくの沖縄で、『祖国復帰』などとうてい実現しそうもないことだと考えていた人はたぶん多かったのだと思います。けれども、地道な活動の積み重ねと、目の前の現実に対してあきらめなかったことが、だんだんと共感する人をふやし、結局は日米政府をも動かすことができたわけです。もちろん、動向を敏感に察知した日米両政府のもとで、実際の「沖縄返還」がおこなわれたわけで、そこに限界をみる見方も当然あるだろうとは思います。
小選挙区になってからの民意の「ぶれ」というものを、とくに今回の選挙結果でも感じたのですが、そういうときに、見かけの力関係に左右されずに、本当の意味での展望をもっているのかどうかをよくわきまえて行動することが、長い目で見れば、歴史を動かしていくことになるのだということを、戦後の沖縄の歴史(まだ終わっていませんが)から見てとることが必要なのでしょう。