縦と横

電子書籍の話です。
村上龍さんが、電子書籍の会社を立ち上げるというニュースをテレビで見ました。
紙の本よりも、持ち運びがしやすいし、たぶん閲覧(配信)料金も安いのかもしれません。
けれども、やはり気になるのは、配信元のデータが壊れたらどうするのかということです。
過去の日本文学でも、『更級日記』『梁塵秘抄』『古本説話集』『とはずがたり』などは、もとの写本自体がひとつしかないことで知られています。たまたまその本が20世紀まで残されたことで、わたしたちはこれらの作品をよむことができるわけです。
そうしたことが、電子書籍でも起きるのではないかという懸念は否定できません。今週の「サラリーマン金太郎」(本宮ひろ志さん、『ヤングジャンプ』誌掲載)でも、電子書籍の事業を展開しようとする主人公が、サーバーのある場所まで案内される場面が出てきましたが、秘密保持ということで、主人公たちは山の中まで会社のヘリで運ばれ、さらに目隠しをしてサーバーのあるところまで行くのです。それだけ、サーバーが破壊されたときの損失は数えられないということでしょう。
そういうリスクを、電子書籍の刊行元は覚悟しているのか。それは、今後の人類の知的遺産の保存も問題でもあるのです。