反省

林博史さんの『シンガポール華僑粛清』(高文研、2007年)です。
1942年、日本軍はシンガポールを占領しましたが、そこで中国系住民を大量に裁判にもかけずに処刑したのです。その記録を追ったものです。
当時井伏鱒二が、軍に徴用されてシンガポールにいて、うすうすこの件についても気付いていたようですが、林さんは、実証的に当時の資料などをつかって、ことがらを再現しています。
それにしても、そのときの参謀だった辻政信は、戦後国会議員に当選を重ねているということを考えると、戦時下の行動に対して、どういう態度をとるのかを、もっと考えなくてはいけないということでしょうか。
竹島にしても、尖閣諸島にしても、千島列島にしても、侵略戦争で奪った土地と、平和的に領土として保有した土地との峻別がきちんとされないことが、ことの一因でもあるのですから、そうした自覚は必要なのでしょう。そのためにも、過去に向き合わなくてはいけないのです。