集約

『日本文学当面の諸問題』(新日本文学会、1952年)です。
1952年3月に行われた新日本文学会の第6回大会の記録をまとめたものです。当時の新日本文学会は、『人民文学』に拠る人たちが、新日本文学会と対立していた頃でした。この大会の報告の中でも、意識的な会費や雑誌の代金の滞納だとか、雑誌を送らせてそれを処分して代金を踏み倒すとか、なんだかわけのわからない行動も、いろいろな地域で行われたとあります。
もちろん、基本は文学の問題ですから、宮本百合子に対する評価の問題や、そのほかにも創作方法のこと、〈勤労者文学〉とか、各地の文学サークルとの関連とか、けっこう多種多様な意見が出ていることがうかがえます。
ただ、このときあたりから、新日本文学会の中での、意見の相違も出てきて、その後の1950年代なかばの、いろいろな問題を予感させるものもあります。そういう意味では、もっと分析されていいものだと思います。

ふっと、ここからおもいついて、窪田精さんの『文学運動のなかで』(光和堂、1978年)のこの時期の部分をひらいてみたのですが、霜多正次や窪田精たちが、当時、いろいろな先達の家におしかけて、けっこう無茶なこともやっていたことが書かれていて、その点では、時代の差も感じてしまいます。