文脈

森浩一さんの『倭人伝を読みなおす』(ちくま新書)です。
いわゆる魏志倭人伝を、最初から読み直してみようというこころみです。なにせ、倭人伝は、人それぞれにいろいろな読みが展開されているので、こうしたものもあっていいのでしょう。
三国志そのものも、陳寿の文章は昔から定評あるものですから、それが当時の中国社会からは辺境の地であった東夷諸国に関しても、表現の工夫はされているようです。
卑弥呼の死に関しても、『以て死す』という表現は、自然死ではないという指摘をされた方がすでにいて、森さんもその意見に賛同されているのですが、考えてみれば、普通の感覚で漢文を読めば、『自然死ではない』という解釈は当たり前のものですから、そこに気付いた人がほとんどいなかったというのも、意外な盲点だったのかもしれません。
森さんの解釈がどの程度妥当かは、今後検証されるのでしょうが、そろそろ倭人伝解読問題も、考古学の所見とあわせて、決着がつきそうな感じがします。ただ、考古学的には、学術調査が不十分な古墳の問題を避けて通ることはできません。〈子孫〉の一族が、どう決断されるかが問題になりそうです。