継続の意識

後藤致人さんの『内奏』(中公新書)です。
中公新書は、こうした実証史学的な近現代史ものを、けっこう出版していて、その点では岩波新書とはまたちがった味をだしているのですが、この本は、昭和天皇をめぐる政治史といったところに焦点があてられています。
実際、中心的な話題は、日本国憲法のもとでの、天皇に対しての政治家の対応がなのです。〈内閣の助言と承認〉のもとで国事行為を行うのが、日本国憲法のもとでの天皇の仕事なのですが、そこに、個人としての天皇の意思が、総理大臣ほかの閣僚とのやり取りの中でどのようにはたらくのかという、微妙な問題がそこにあります。実際、昭和天皇は、けっこういろいろなことに対して、関心をもっていたということのようです。
いまのみかどは、即位にあたって日本国憲法を守ると言明されましたから、その意味で、これからどのような展開があるのか、そのうちくるであろう代替わりのときに、かつてのような〈自粛〉さわぎがおきるのか、そうしたことは、ひとりひとりの国民が、現状をよく知って、このあと今の日本国の政治システムをどうしたいのかというところと、切り離せないのでしょう。そのためにも、現在のシステムで、政治家たちが、宮中に対してどう向き合っているのかを知っておくのは大切です。