シンボリック

李商隠詩選』(川合康三選訳、岩波文庫、2008年)です。
中国の文語文学には、虚構のにおいが乏しいといったのは確か吉川幸次郎でしたが、李商隠(811-858)は、そうした中では、象徴的な詩を書いています。
逆に、そこが読者を選ぶ要素もあるようで、少し、読むのに難渋しました。
ところで、この作者は、『雑纂』(『中国古典文学大系 歴代笑話選』平凡社、1970年に収録)という、『枕草子』にも影響をあたえたのではないかと江戸時代に儒者の一部が言い出した、へんな本の著者という説があるのですが、文庫の解説には、まったくそれに触れていません。「ものはづけ」的なこの本と、李商隠の連想を重んじる詩のこころとは、つながっているものも感じるので、別におかしいとは思わないのですが。