格差の根拠

樋口隆康『古代中国を発掘する』(新潮選書、1975年)です。
当時発掘された、馬王堆や、満城という、前漢時代の陵墓の発掘結果の報告です。
そこには、当時の支配層が、いかに豪華な副葬品をつくらせたのかがみえてきます。とくに、満城は、漢王朝の一族、中山王の墓なのですが、金縷玉衣という、遺体を宝玉で覆って、金の糸で結びつけたもので封じ込めるという、当時だけに流行したものが発掘されたというのです。
もちろん、そうしたものが、人びとの日常生活と無縁であるにはちがいないのですが、そうしたものに、最高の技術が使われてしまうというのも、技術のもつ意味を考えさせてしまいます。漢王朝は、そんなに家柄が高くない出身ですから、自分たちが支配階級であることを、常に意識させなければならないと思っていたのかもしれません。そのためには、民衆と隔絶した生活を送らなければならなかったのかもしれません。そうした、『見せつける』ための格差というのも、いやなものです。
すぐれた技術に驚きながらも、そこを忘れることはできません。