歳月

新潮社の『現代ソヴェト文学18人集』(1967年、全4巻)をひととおり読みました。
当時初訳のものばかり集めたので、ショーロホフとかソルジェニーツィンとかは入っていないのですが、それだけに、当時のソビエト文学のありようがみえてくるのかもしれません。
第4巻に収録された作品に、グラジーリン(1935年生まれ)という作家の「新年の最初の日」(1963年発表、草鹿外吉訳)があります。革命時代からの老父が病気で入院する。1930年代に生まれた息子は新進画家として認められているが、なかなか〈公式的な〉作品が描けず、地方に〈取材〉に行くことを勧められる。この親子の視点を交互に重ねながら、革命世代と、その後の世代との対立と調和とを描こうとした作品です。父にしても、革命時代の暗部をこの眼でみているのですが、それよりもソビエト政権のうみだしたものを基本的に肯定する、息子にしても、新しい感覚をもちながらも、父の世代の全否定にははしらない。こう書くと、〈何だ。結局は体制肯定ではないか〉といわれそうですが、そういう立場に立ちながら、普遍的な作品を作り出した作者の力量は、公平に認められるべきです。
スペインのフランコ政権も、40年ちかく続きましたが、そうした時代を総括する作品は生まれているのでしょうか。もちろん、日本に紹介されていないだけなのかもしれませんが。


あとで集英社の『世界文学事典』をみたら、グラジーリンは1976年にパリに亡命したとのことです。ブレジネフ時代とは、ひどい時代なのですね。